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レディスクリニック・セントセシリア院長のBLOGです。


by cecilia1011
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不妊治療とストレス

アテネオリンピックが終わりました。日本は史上最高のメダル数を獲得しました。
 私も連日深夜までオリンピックを観戦しました。特に私の好きな柔道はテレビに釘付けになり、芸術的ともいえる技の攻防を堪能しました。
 金メダルラッシュにわいた柔道の中で、井上康生選手が敗れたのは大変なショックでした。井上選手といえばかつての盟友中村和裕選手をして「康生には誰もかなわない」といわしめた天才であり、金メダルをとって当たり前、負けは許されない選手でした。プレッシャーは大変なものだったでしょう。
 私はオリンピックのこうした一面をみていると、不妊治療に通じるものを感じてしまいます。
 
以前のクリニックでこんなことがありました。
 その方は長い不妊治療を経て妊娠し、もう臨月を迎えていました。分娩予定日を1週間過ぎても陣痛が来ないので、入院して分娩を誘発した方がいい、とすすめました。
 するとその方は、「先生、もう3日待ってちょうだい。このお腹であと3日、街を歩いてみせびらかしたいの。」というではありませんか。
 彼女にとってはその大きなお腹が金メダルだったのですね。
 
不妊治療には大きな ストレスを伴います。それは治療を始めてもなかなかすぐには結果が出ないこと(注意*)がひとつの原因と思われますが、その負担の多くが女性にかかってくることも大きいと思います。
 1人の女性にのしかかる期待と重圧。それは金メダルを期待されたオリンピック選手の姿と重なって見えます。
 毎日の不妊外来のかげでどれほどの涙が流されていることでしょうか?
 私たちはそのことを重く受けとめ、期待にこたえなくてはなりません。と同時に治療に伴うストレスをいくらかでも軽減できるよう考えなくてはなりません。
 
何かしてあげられないか。
 まず最新の情報を常に吸収すること。ただし、すぐにそういったものに飛びつくのではなく、自分の中で情報を構築し、負担のできるだけ少ない形で患者様に還元すること。
 それから胚培養士にも積極的に患者様とふれ合いをもっていただくこと。
 そしてアロマセラピーが有力な手段になりうるので、 アロマセラピストの協力で不妊症におけるアロマセラピーを体系づける。
 最近こんなことを考えています。
                            2004年9月記
注意*
 体外受精などの高度生殖医療が マスコミで華々しく宣伝されますと、不妊治療がいかにも科学的に完成され、治療を受ければ誰でもすぐに妊娠できるかのような幻想をどうしても抱いてしまいます。
 実際の不妊治療は非科学性、偶発性が関与することが多く、まだまだ未完成です。現在世界中の研究者が不妊治療を少しでも科学的に完成されたものに近づけるため努力しています。

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不妊治療とストレス_b0062115_052183.jpg
by cecilia1011 | 2004-11-11 00:53 | 不妊治療とストレス